離婚による財産分与

 離婚により、一方の配偶者名義の不動産が、他方の配偶者に財産分与される場合、速やかに財産分与を原因とする移転登記をしておくべきです。

1 協議離婚の場合:現在の名義人の協力が必要

離婚に際し夫婦が築いた財産の精算として行われる「財産分与」は、金銭のほか、自宅の土地・建物のような不動産も対象になることがあります。

仮に、離婚前は夫名義で、財産分与として不動産の所有権を妻に移転する「合意」がされたとします(協議離婚の場合)。

この場合、
 ①役所に「離婚届を提出した時点」 又は
 ②離婚夫婦間で「財産分与の合意をした時点」
のうち、遅い方の時点で権利が移転します。

しかし、「権利が移転する」のは、神様の目から見た話です。

権利を取得した他方配偶者としては、「財産分与を原因とする所有権移転登記手続」を申請し、無事に登記名義を取得して初めて、権利を確保できます。
それまでは、元配偶者が誰かに売ってしまったり(二重譲渡)、これを担保に銀行からお金を借りたりしてしまうと、自己の権利を買主や銀行に主張するのは、困難になることが多いです(対抗問題)。

よって、下記3の注意点をよく考慮のうえ、速やかに所有権移転登記を申請しておくべきでしょう。

その際、協議離婚で財産分与をする場合は、現在の所有権登記名義人の協力(実印の押印、印鑑証明書、権利証の提供、司法書士による本人確認手続)が必要となります。

もし、離婚届を提出し、財産分与も合意したのに、不動産登記手続に協力してくれない場合は、登記手続を求める裁判を起こさなければならなくなります。

2 調停又は審判による離婚の場合:取得者だけでできる場合あり

上記1と異なり、家庭裁判所の調停又は審判により離婚が成立し、財産分与の内容も調停又は審判で決まった場合は、
財産分与として不動産の所有権を取得した人が、元配偶者の実印等の協力がなくても、事実上単独で登記手続を申請できる場合があります。

離婚の調停調書又は審判決定書に、所有権登記名義人である元配偶者が「取得者に対する所有権移転登記手続に協力する」旨の記載と、不動産の特定事項が正確に書かれていれば、現名義人の協力は不要となります。
なお、裁判所は登記まではやってくれませんので、家裁の手続が終わったら、別途、当事者において登記を申請しなければなりません。

この、調停調書にどう書いてあるか、ということはとても重要です。弁護士が代理している調停ですと、
代理人弁護士から、私たち登記の専門家である司法書士に、「調停調書の書き方はこれで大丈夫でしょうか?この文言で登記できますか?」と事前に相談することもあります。

弁護士には依頼せず、当事者だけで調停を進めている方は、調停終了前に、離婚成立後の登記手続を見据え、一度司法書士にご相談されることをお勧めします。

仮に、調停調書の内容が「夫名義の自宅は妻の所有とする」などという曖昧な記載だけで終わってしまったら、
登記手続でまた夫の実印、印鑑証明、権利証が必要となります(妻単独では登記手続ができない記載文言です。)。
「自宅といえばあの土地・建物に決まってるではないか!妻の所有とすると書いてあれば妻の物に決まってるではないか!」と思いたいところですが、そうはいかないのが現在の不動産登記制度なのです。

3 注意点

離婚が成立し、財産分与として不動産の所有権を移転することも確定したとしても、
実際に所有権移転登記を申請するにあたっては、いくつか気を付けるべきことがあります。

(1)住宅ローンなどの負債が残っている場合

住宅ローンや事業融資の借入などがまだあり、抵当権(根抵当権)の登記が残っているときは、所有権移転登記申請前に、銀行など金融機関に相談をするべきです。

多くのローン条項では、債務が残っている間は所有権を他の人に移転することを禁じていたり、金融機関の承諾を要するとされています。もし、銀行に何の相談もせず移転登記をすると、取得した人が不利益を受けるおそれがあります。

住宅ローンなどが残っているケースでの財産分与は、財産分与で取得する人の収入等資産要件が審査され、銀行の審査が通れば、所有権移転登記と債務者の変更登記を申請すべき場合が多いと思われます。

(2)贈与税がかかるケースもありえる

国税庁の情報によると、「財産分与」とはいえ当該夫婦が築いた財産全体から見て、その不動産の価値があまりにも多くの割合を占めているときは、贈与があったものとして財産分与を「受けた側」に贈与税が課税される場合があります。

個別の案件で贈与税が発生するか否かの境目がどのあたりかにつきましては、税理士の判断が必要です。この点につきご心配な方は、税理士の先生にご相談の上、弊所へ所有権移転登記申請をご依頼されるのがよいと思います。
また、国税庁ホームページの情報も、参考までにご紹介します(平成29年6月25日閲覧)。
タックスアンサーNO.4414離婚して財産をもらったとき

(3)譲渡所得税がかかるケースもある

国税庁の情報によると、財産分与を「する」現登記名義人の方に、譲渡所得税が発生することがあります。また、財産分与を「受けた側」が、その後、取得時の市場価格以上の値段でその不動産を売却した場合は、別途譲渡所得税がかかる場合があります。

個別の案件で譲渡所得税が発生するか否かにつきましては、税理士の判断が必要です。この点につきご不安な方は、税理士の先生にご相談の上、弊所へ所有権移転登記申請をご依頼されるのがよいと思います。
また、国税庁ホームページの情報も、参考までにご紹介します(平成29年6月25日閲覧)。
タックスアンサーNo.3114離婚して土地建物などを渡したとき

以上より、財産分与として不動産所有権を分与する予定の場合は、離婚届を出す前に、調停や裁判が終わる前に、
司法書士、税理士、(ローンがある場合は)金融機関に、事前にご相談されることをお勧めします。

4 費用の目安

(1)登録免許税

固定資産評価額×2%(土地・建物とも税率は共通)

(2)報酬、郵送代等

外国裁判所の判決文の翻訳の要否、出張の要否等、個別の事情を考慮しお見積りします。