登記識別情報を持っていない場合

Q 登記識別情報(登記済権利証)を失くした場合でも不動産を売ることはできますか?

A.はい、できます。ただし、通常よりも厳格な手続となります。

≪解説≫

(1)登記識別情報の提供の必要性について

売買による所有権移転登記の売主と買主、
抵当権設定登記の抵当権者と設定者など、
契約当事者が共同で登記を申請すべき場合の多くの局面で、
登記識別情報(旧不動産登記法では登記済証)を
管轄登記所に提供するのが原則です。

登記識別情報は、「その不動産のその権利を取得したことの証明」として最も大切なものです。
その登記が実行されることで登記記録上形式的に不利益を受ける人(登記義務者)が提供することを要します。
具体的には、不動産(の所有権)を売る場合の売主、贈与する場合の贈与者の所有権に関する登記識別情報、抵当権の抹消に応じる場合の抵当権に関する抵当権者の登記識別情報などです。


登記を申請した当事者のうち、名義を失う人の本人確認の趣旨で提供します。

(2)登記識別情報を提供できない場合の例

登記識別情報は、そもそも通知されなかった(不通知)、失くした(紛失)、失効申出により失効させた場合に、提供不能となります。提供できない場合は、下記の方法で、登記を申請することが可能です。

なお、登記識別情報通知書を紛失した場合や失効させた場合、再発行はされません。

(3)登記識別情報を提供できない場合の措置

 方法① 事前通知(不動産登記法23条1項)

事前通知は、登記申請についての本人の意思を確認するため、管轄登記所から申請人に対し、「登記申請がなされたこと」及び「ご本人が確かに登記を申請した旨を申し出る旨」を通知する書面を郵送し、一定の回答期間内に、登記名義人から間違いない旨の申出があったときにはじめて登記を実行する制度です。

回答期間は、通知発送日から2週間です(不動産登記規則70条8項)。
外国に住所を有する場合は4週間です(同但書)。

事前通知は、回答期間を伸長することはできません。
登記義務者が対応を失念するなどし回答期間を経過してしまうと、登記を取り下げなければならなくなります(取下げに応じなければ却下されます)。

よって、親族間の贈与など、事前通知の対応がうまくできず、取下げや却下になってももう一度登記を申請すればいい案件であれば、事前通知でも差支えないかと思います。

しかし、宅地建物取引業者様が仲介する他人間の売買や、住宅ローンのご利用で銀行の抵当権設定を決済日に申請し、確実に登記を成功させるべき案件では、事前通知方式はリスクが高いです。
そこで、そのようなときは、次の「方法②」や「方法③」が適しています。

 方法② 資格者代理人による本人確認情報の提供(不動産登記法23条4項1号)

登記の申請が、登記申請の代理を業とできる資格者(司法書士又は弁護士)が代理人としてされる場合に、当該代理人が、本人と面談し、本人に間違いないことを確認し、「本人確認情報」(職印を押印し職印証明書を添付します)を作成し、登記の申請書と一緒に提出します。

登記官が本人確認情報の内容を相当と認める場合には、事前通知が省略され、すぐに登記が実行されます。

この方法②の場合、万が一、売主が所有者に成りすました偽者で買主のお金を騙し取る地面師であった場合の全責任を司法書士が負うことになるため、通常の登記費用に加え、本人確認情報の作成につき司法書士報酬が発生します。弊所の場合、81000円(消費税込)です。

 方法③ 公証人による本人確認(不動産登記法23条4項2号)

登記の委任状について、公証人から当該申請人が本人であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるときは、事前通知が省略され、すぐに登記が実行されます。

≪手続の流れ≫

司法書士に事前に取引の内容をご説明いただき、事案に即した委任状書式を作成します。
この委任状と印鑑証明書などの本人確認資料を持ち、公証人役場へ行っていただきます。
公証人の面前で、委任状に住所、お名前をご記入いただき、実印を押印いただきます。
公証人から必要な認証をしてもらい、費用を支払います。

≪メリット≫ 方法②に比べ、費用が少なく済むことが多いと思われます。

≪デメリット≫ 決済前に、一度公証人役場へ行き手続をする手間があります。