株主であることを証明する方法とその限界について

1 最新の「株主」が誰なのか、誰が何株を保持しているか、公文書による証明の可能性

株式会社の所有者(オーナー)であるところの株主が誰であるかは、
株主本人にとっても、株式を現株主から買おうと考えている人にとっても、会社自体にとっても、非常に重要です。

司法書士にとっても重要です。
新任取締役の就任登記、商号変更、取締役会等の機関変更など、
株主総会決議を要する登記申請の依頼を受けた場合、
適式な株主総会が開催され有効な決議がなされたことの前提として、株主が誰であるかを確認させていただくべき場合が多くあるためです。

そこで、「株主名簿」や「確定申告書の別表二」などで現在の(基準日の)株主の一覧を確認させてもらうよう依頼者にお願いすると、
謄本(履歴事項証明書)など、株主に関する事項が一切書かれていない書面を提示されることが、意外と多い印象です。

しかし、「誰が、何株持っている株主であるか」は、登記されていません(会社法に「株主が誰か」を登記する規定が無いため、登記できません)。
会社の謄本に、「代表取締役」「取締役」「監査役」「会計監査人」は登記されていますが、これらは基本的に「株主から任命された職務遂行者」であり、会社のオーナーたる株主(と同一人である場合もありますが)ではありません。

株主が登記されないのは、法律上、株式会社の株主が誰であるかを登記することとする規定がないためです(会社法911条3項参照)。
法務局にその時々の株主名簿が保管されているわけでもありません。

成立後の株式会社について、最新の株主がどこの誰であるかを証明できる手軽に取得できる公的書面(政府の公的機関が発行する書類)は、基本的にありません(2020年4月6日時点)。

しいて言えば、会社成立時の株主と株式譲受人との間の株式売買契約書を公正証書で交わす場合(であっても譲渡制限株式の場合の譲渡承認が適式になされたかどうかの問題は残ります)や、裁判所に対し「株主の地位確認訴訟」を起こしその判決書と確定証明書があれば、株主が誰であるかに関する公的書面といえなくもないですが、これらを取得する労力はなかなかのものです。

2 定款に書かれている発起人も、会社成立後は株主であるとは限りません。

他方、会社を設立する段階では、発起人(会社を設立する人)の住所と氏名(法人の場合は商号/名称と本店/主たる事務所)が、原始定款に必ず書かれます(会社法27条5号)。
発起人は、必ず出資をし、会社成立時点の株主になります。

そこで、少なくとも会社設立時の定款を見れば、「会社が成立した瞬間における発起人である株主」がどこの誰であるか、明らかとなります。
設立時の定款でしたら、公証人による認証もされているため、設立時の株主に関する公的証明書の側面もあるといえそうです。

しかし、募集設立(発起人以外にも出資をし株主となる者がいる設立方法)の場合は、定款に発起人以外の株主が書かれるわけではありません。
また、発起設立(発起人だけが出資をし株主になる設立方法)であっても、会社成立後、たとえば3日後に、発起人であった株主が株式を誰かに売った場合も、定款に書かれている発起人は既に過去の株主です。

定款に書かれている発起人も、会社成立後は株主であるとは限らないのです。

3 株主名簿の編纂、又は、株主名簿管理人の選任

そこで、法律上は、自社が発行した株式について、誰が、いつ、何株取得したかは、
会社自身の責任で、株主名簿を作成・更新し、管理することとされています(会社法121条)。

株主の人数が多い、株式譲渡が頻繁にあるなどの事情により自社での株主名簿管理が困難である場合は、
株主名簿管理人を選任し、株主名簿の作成・更新を任せることもできます(会社法123条)。
この場合は、「株主名簿管理人がどこの誰であるか」が、登記されます(会社法911条3項11号)。

株券を発行する会社の場合は、株主は、前株主から株券の交付を受けるなどの方法により株券を所持することにより、株主の地位を主張する方法も考えられます。
ただし、株券が偽造されたものであるかどうかまでは、なかなか判断は難しいのが実情です。

4 株主の地位の証明方法の限界

上場企業など信託銀行などに株主名簿管理を委託しているケースであれば、適式な株主名簿の管理がされているのが通常です。

株主名簿管理人を選任せず、自社で株主名簿を管理している会社の場合は、株主は会社に対し、株主名簿の閲覧等の請求ができます(会社法125条2項)。
株式売買、株式の相続や遺産分割などにより株主に変動があったときは、株主名簿の更新を会社に求めることもできます(会社法133条等)。

問題は、株主名簿管理人を選任せず、かつ、自社で株主名簿の管理が適式にできていない場合です。
このような場合は、株主が自分の権利を行使するにあたり、支障が出てくることがあります。

中小企業にあっても、親族以外にも複数の株主がいて、株式の売買や相続などが比較的頻繁に発生する株式会社におかれましては、信頼できる人(会社・法律専門職)に、株主名簿管理人に就任してもらい株主名簿の作成・更新を委託するのも、株主が誰であるかを常に明確にしておくのに有益です。

別ページにて、株主名簿管理人制度の活用による株主の地位保全について も、解説しています。